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2022年8月1日国税庁は「所得税基本通達の制定について」の改正案に対するパブリックコメントの募集を開始しました。
パブリックコメントの募集期間は8月31日までです。

改正案は雑所得について新たな線引きをするものです。
主に副業収入を事業所得として申告してきたサラリーマンからブーイングがあがっています。

残念ながら、パブリックコメントにどれだけ反対意見が集まろうが、そのまま改正されると思います。

なぜならば、国税の常識を納税者に知らしめるために明文化したにすぎないのですから。

今回の改正は、税理士としても納税者の方に正しく理解してもらいたいと思っています。

改正を理解するために知っておく知識

事業所得と雑所得の区別の問題

所得は、10種類に分類されます。

事業所得の定義

事業所得とは、
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令に定めるものから生ずる所得であり、
その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額である。
(所得税法27条・所得税法施行令63条)

税法上に定義されている以外にも、最高裁判所で以下のように事業所得は定義されています。

自己の計算と危険において独立して営まれ、
営利性、有償性を有し、
かつ反復継続して遂行する意思と
社会的地位とが客観的に認められる
業務から生ずる所得
(最判昭和56年4月24日)

雑所得の定義

雑所得とは、事業所得のほか、他の8つのいずれの所得にも該当しないものをいう。

雑所得には無い!事業所得だからこそのメリット

青色申告の特典

雑所得には青色申告の適用が認められていません。
青色申告が認められるのは、事業所得のほか不動産所得、山林所得の3つだけです。

青色申告の特典は多いのですが、三大メリットは以下のとおりです。
(青色申告には少額減価償却資産の特例もあるが、いつ無くなるか分からない経過措置のため、ここでは除外)

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 純損失の繰越控除

損益通算

雑所得の赤字は、他の所得と一切損益通算することができません。
対して、事業所得の赤字は、例えば給与所得、不動産所得と損益通算することができます。

大きなポイントになっているのが、損益通算です。

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確定申告の場で何が起こっているのか

税務署職員・税理士の立場から

今も昔も、税務署の職員も税理士も、サラリーマンの副業について、事業所得か、雑所得か、どちらに該当するか答えるならば、「だいたい雑所得」と答えることになります。

なぜならば、何度も裁判所において同じ結果がでているからです。

納税者が事業所得と主張し、国税側が雑所得として裁判で争った結果は、すべて納税者の敗訴です。
つまり雑所得として判例が蓄積され、国税側、税理士の常識として定着しているからです。

多くの税理士がYoutubeで、会社員の副業はほとんどが事業所得にならないことを説明しています。



税理士として責任を全うしようと思ったら、すべて裁判で負けている現状100%アウトの申告を納税者に勧めることはできないです。
もし、税務署から事業所得でなく雑所得と指摘を受け、修正申告をすることになったら、本来正しく申告していれば支払う必要のなかった余計な税負担が発生してしまいます。

個人的に、サラリーマンの副業を事業所得とする確定申告書に署名を入れることは、税理士として恥だとさえ思っています。

副業を事業所得として申告する納税者の急増

サラリーマンは給与から税金を差し引かれています。
理論上、確定申告することによって、副業の赤字を給与所得と損益通算し、税金の還付を受けることができるようにみえるのです。

これを間違った解釈で、怪しいコンサルタントや無責任な著者が著書で間違った紹介しています。
(これを「ちょいワル還付スキーム」と個人的に呼んでいます。)
加えて昨今では素人サンがネット上で拡散しています。。。

それを知ったサラリーマンが副業を赤字の事業所得として申告してしまうことが著しく増えているのです。

税務署に「開業届」を提出したからといって、必ずしも事業所得として認められるわけではありません。

業を煮やした国税庁が、歯止めをかけるため明文化したのが今回の改正案になります。

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後編の目次

改正案の概要

注意書の解説

ひとこと