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毎年12月は税理士試験の合格発表日があります。
2020年の受験者数をみると、10年前と比べて半減といった感じで、隔世の感があります。

下の世代の人口が減少しているのですから、受験者が減少しているのも仕方のないことでしょう。
そうした世相を反映し、税理士業界でも人手不足が言われています。

IT化が進むことにより税理士は将来性がないと思われています。
それも受験者減少に拍車をかけているに違いありません。
実態を知らない外野の方々にはそう思われてもしかたありません。

外野の方々が思っているよりも経験の蓄積がモノをいう職業が税理士です。

惑わされずに、これから税理士を目指して経験を積もうと考えている方、税理士業界に足を踏み入れようとしている方にお話をしたいと思います。

正直言って、「指導者との出会いがすべて」です。

ここで言う指導者とは、仕事を教わる所属先の先輩の税理士を指します。

この記事では、運悪く最初の事務所選びに失敗しないよう、筆者の経験を踏まえて、個人的な事務所の選び方と言うより、特に失敗を避けるために念頭に置いていたことを伝授したいと思います。

記事を読むにあたって

この記事を読んで欲しい方

税理士を志して、初めて税理士事務所で働こうとする正社員希望の者

この記事を読む意味が無い方

  • 税理士志望ではない者
  • 何年も同じ税理士事務所で働いている税理士志望者
  • すでに税理士(有資格者を含む)として働いている者
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ありがちな失敗5選

繁忙期から働き始めてしまう

税理士試験の合格発表は、例年12月です。
12月の合格発表をうけて、1月から税理士事務所で働こうとする方が多いです。

12月は、税理士事務所にとって繁忙期の始まりとなります。
税理士業界の繁忙期は、12月から3月の確定申告期限、4月に一息ついてから、3月決算法人の税務申告期限となる5月末までです。
繁忙期の間、未経験者に懇切丁寧に仕事を教える余裕のある先輩・同僚社員は少ないはずです。

したがって、未経験者は年明けからの税理士事務所への就職・転職は避けるべきです。

8月の税理士試験を終えて、9月から働き始めようと考える者も多いです。
そこで、未経験者に仕事に慣れてもらうために9月から採用募集をしている税理士事務所が多いのが実情です。
9月からのキャリアスタートは、個人的にもベストタイミングだと思います。

歴史がある事務所だから経営が安定していると思ってしまう

新しい会社より古い会社の方が、安心感を覚える人が多いのではないでしょうか。
個人的には、老舗の旅館、食品会社なんかは、創立から長い年を経ていると特に安心感を覚えてしまいます。

歴史ある事務所は、昔のよき時代を謳歌してきました。
かつての我が国の高度成長期と共に事務所のクライアントも成長し、そのまま優良クライアントを抱えているケースも多いです。
優良クライアントが多いほど、税理士事務所の経営は安定します。

ところが、昨今では歴史ある事務所から優良クライアントが離れつつあります。
理由として、税理士事務所が抱える内部要因と抵抗しきれない外部要因があります。

歴史ある事務所が抱える内部要因には、主に以下のものがあります。

  • 税理士の高齢化・健康不安、従業員の高齢化、後継者不在
  • 事務所の閉鎖を見据えているため、今さら業務の高度化・細分化に対応するつもりはないし、最新ツールの導入に前向きにならない

ちなみに外部要因は以下のものが考えられます。

  • 全国展開事務所の地域進出
  • クライアントの社長交代による顧問変更
  • クライアントの消滅(清算、吸収合併される)

歴史の浅い事務所は、古い事務所とは違い上記の内部要因に頭を悩ませることがありません。
外部要因については、事務所の歴史に関係なく、条件は同じです。

右肩下がりの古い事務所と右肩上がりの新しい事務所、どちらを選んだ方がよいか。

税理士を志すなら、自分を成長させることを一番に考えるべきです。
事務所と共に成長できる方が、キャリアパスを描きやすいと思います。

中規模~大規模な事務所でキャリアをスタートしてしまう

「大は小を兼ねる」という言葉があります。

学生が就職先を選ぶにあたって、できる限り大企業を志向する傾向があるのは知ってのとおりです。
この傾向は、税理士業界でも同様で税理士を目指す者の間でも事務所の規模が大きいほど人気があると言えます。

ところが、税理士事務所にそのまま上記の言葉が当てはまるかというと、そうでもありません。
筆者は多くの税理士と話をしてきましたが、大規模事務所から独立開業にこぎつけている方は少ないです。

大規模事務所で働くのであれば、そこの事務所で出世を目指して働くのがベターかと思います。
しかしながら、大規模事務所で出世できるのは極一部の優秀な人です。
未経験で入社した多くの人は、優秀な上司・同僚に圧倒され、かつ、ハードな仕事に心身を壊し、短い期間で退職することになります。

短い期間での離職は、次の転職に差し障りがあるのは言うまでもありません。
同じ税理士業界では、そういったケースを見聞きしているので、短期離職も大目に見てもらえることもありますが、こと一般事業会社での転職に際しては、税理士業界の実情など知らない訳ですから、マイナスとして捉えられてしまいます。

何よりも残念なのは、憧れの大規模事務所に就職したものの、仕事の内容、ハードさ、業界に嫌気がさし、税理士になることに意義を見出せなくなってしまう方が多いことです。
そういった方は大規模事務所を退職したら、二度と業界に戻ってきません。

だから、大規模事務所出身の税理士に出会うことが少ないのだと推測します。

そのうえ、大規模事務所は、分業制を採用しているケースが多く、一般的な税理士事務所で必要な仕事の基礎、しいては独立開業のためのスキルが身につかない恐れが高いです。

これが「大は小を兼ねる」がそのまま当てはまらない理由です。

自分の能力を客観的にみて、身の丈にあった事務所を選ぶ方が、長期的には能力開発、資格取得につながるでしょう。
どうしても大規模事務所で仕事をしてみたかったら、有資格者となってから、あるいは経験を積んでからキャリア採用枠で応募するのがベターだと思います。

事務所の雰囲気を感じ取れないまま事務所を選んでしまう

当たり前ですが、事務所の空気感はそれぞれです。
働こうとする事務所の空気感が自分の気質に合う、合わないは、人生の時間の多くを職場で過ごすのですから重要です。
空気感は事務所の代表者で決まってしまうことがほとんどです。
(まれに従業員が大きな顔をして空気を支配しているところもあり)

大抵のところ、代表者とウマが合うか、です。

事務所の空気感をつくるベクトルを洗い出してみました。
程度の差は、周囲の同僚の影響もあり、時の経過とともに変わることもあります。
出来る限り事務所を選ぶ際には、事務所の雰囲気を観察してみてください。

体育会系 ⇔ 非体育会系
飲み会重視 ⇔ 事務所行事なし系
やりがい系 ⇔ ビジネス志向
資格取得応援 ⇔ 資格受験生に対して配慮なし
男尊女卑系 ⇔ 女尊男卑系
年功序列 ⇔ 実力主義
管理される管理主義 ⇔ 裁量を任される放置主義

思いつくだけでも、27=128タイプの事務所があることになります(笑)。

事務所の代表者の経歴に惹かれてしまう

最近では事務所のホームページに代表者のプロフィール欄があることが珍しくありません。
そこを見ると、驚くほど華やかな経歴な方もおられます。

華やかな経歴の代表者(以下「スーパーマン」と記す)は、仕事ができるようにみえます。
どうせなら、仕事のできる方に仕事を教わりたいですよね。

でも、「ちょっと待った!それ危険」と声を大にしたい。

華やかな経歴、実績を積み重ねた人物は、才覚があって、加えて努力があったに違いありません。
そういった人物は意外と謙虚だったりして、自己評価は低めです。

スーパーマン、全体的な基本性能が高い人物ほど、仕事ができない人物の気持ち、能力を推し量ることは苦手なように思います。
謙虚に自分は大したものではないと思っているスーパーマンは自分基準で、「この程度の仕事はできるだろう」と従業員に仕事を任せる、指導します。

ところが、そんな上手くはいかず、従業員のパフォーマンスは、スーパーマンの期待を常に下回ってしまうことになります。
普通の従業員にとっては、スーパーマンの普通は荷が重すぎるのです。

そんなことが続くと、スーパーマンは次第に厳しい目で従業員を評価することが常態になってしまいます。
いずれ、スーパーマンから事務所全体にわたって従業員へのアタリが厳しくなっていきます。。。

だから、未経験者にはスーパーマンの事務所はお勧めしません。