2021年6月某日、ソーシャルレンディングのビジネスモデルを立ち上げたmaneoの元代表が不可解な死を遂げたようです。
少し時を戻します。
黎明期をリードしつつも不祥事をおこしたmaneoに代わって、業界を牽引したのがSBIソーシャルレンディングでした。
ところが、2021年に入ってから、SBIソーシャルレンディングにも暗い影が落とします。
不祥事が白日の下にさらされ、同社は自主的な廃業に追い込まれました。
このキナ臭さ。
もう、さすがにソーシャルレンディング投資は下火でしょうし、さらなる投資は危険だと思います。
筆者は税理士として確定申告の依頼を受任しています。
なかにはソーシャルレンディング投資をしている個人の方もおられます。
思えば、初めてソーシャルレンディングの確定申告をすることになったときは、職業柄少し嬉しかったです。
それと同時に、「将来マズイことにならなければいいな・・・」と心のなかで思っていました。
そこで、今回はソーシャルレンディングの投資資金が償還されないことが確定した場合の確定申告の話です。
♦目次♦
ソーシャルレンディングの税務
所得税
ソーシャルレンディングの分配金による収入は、雑所得に分類されます。
日本の所得税は、あらゆる所得を10種類に分類して、それぞれに応じた課税方法を採用しています。
雑所得は、総所得金額を構成し、超過累進税率により課税されます。
源泉所得税
所得税の世界では、収入から差し引かれるタイプのものを源泉所得税といいます。
源泉所得税は、所得税の前払いの性質があります。
ソーシャルレンディングの源泉所得税は、一律20.42%(2037年までは復興特別所得税0.42%を含む)です。
したがって、ソーシャルレンディングの分配金を受け取る際には、源泉所得税が差し引かれています。
消費税
消費税は課税対象外になります。
つまり、ソーシャルレンディングの分配金の受け取りは、消費税を含まない金額で受け取っています。
個人事業者で消費税申告が必要な方は、ソーシャルレンディングの収入を含めないように気をつける必要があります。
損失が生じたとき
概要
ソーシャルレンディングの出資額が償還されないことが確定した場合は、その確定した年中の雑所得の計算上、その戻ってこない出資金額を雑所得の必要経費とすることができます。
ただし、すべての雑所得の計算を終了させたうえで、それでも雑所得の金額がマイナスになった場合は、雑所得の金額はゼロとして確定申告を行います。
根拠条文の確認
所得税法第51条第4項
居住者の
不動産所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供され
又は
これらの所得の起因となる資産(…省略…)
の損失の金額(…省略…)は、
それぞれ、その者の損失の生じた日の属する年分の
不動産所得の金額又は雑所得の金額(…省略…)を限度として、
当該年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
計算事例
20XX年中に生じた雑所得の計算要素
①仮想通貨の利益:80万円
②ソーシャルレンディングの分配金(税引前)5万円
③ソーシャルレンディングの出資毀損額:100万円
20XX年の雑所得の計算(条文に則して計算する場合)
ⅰ総収入金額:①+②=85万円
ⅱ必要経費:③=100万円 > 85万円 ∴85万円
ⅲ雑所得の金額:ⅰ-ⅱ=0
確定申告の適否
雑所得の金額がゼロならば、確定申告不要だと考える人も多いと思います。
ソーシャルレンディングで受け取る分配金からは、所得税が差し引かれています。
したがって、その所得税の分を還付してもらうためにも確定申告を行った方がベターです。
まとめ
ソーシャルレンディングの確定申告は・・・
- 分配金は雑所得に区分される
- 投資資金が償還されないことが確定した年において、その未償還相当額は雑所得の必要経費にすることができる
- 確定申告をすると源泉所得税が還付されるケースがある