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法人の本店が移転すれば、移転登記が必要になります。
なぜか、2021年はクライアントの本店移転が多くて、事務作業が増えています。

今回は、稀ですけれど、法人の本店の移転のタイミングによっては、税理士実務が混乱することがありますので、ご紹介しようと思います。

法人税(国)の申告書の提出先

国税の場合、法人税申告書の提出は、納税地を所轄する税務署に提出します。

したがって、会社の本店(本社)の移転があった場合は、法人税申告書を提出する時点におけるその本店(本社)が在る地域を所轄する税務署に提出します。

法人税法第16条(内国法人の納税地)

内国法人の法人税の納税地は、
その本店又は主たる事務所の所在地とする。

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地方税の申告書の提出先

国税の申告とは違い、地方税の申告は異なります。

地方税は、法人の事業年度内に事務所等を有した期間があれば、その事務所等があった地域の地方公共団体に課税権があります。

仮に、同一事業年度内に3回も本社移転した場合を考えてみましょう。

例えば、法人の第10期の事業年度内に高崎市、熊谷市、さいたま市と3回も本社の移転があった場合は、高崎市、熊谷市、さいたま市にそれぞれ課税権があるため、これら3市に第10期の申告書を提出します。

地方税法第53条(法人の道府県民税の申告納付)
同法第321条の8(法人の市町村民税の申告納付)


・・・(省略)・・・
その法人税額の課税標準の算定期間中において
有する
事務所、…(略)…所在地の道府県知事・市町村長に提出し、
・・・(省略)・・・

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申告期限の前に移転があった場合

~先の例の続き~
その後さらに、第10期事業年度末から第10期の法人税の申告期限までの間に本社(本店)が川口市に移転した場合は、川口市には第10期の申告書を提出したりはしません。

ややこしいのですが、国税の法人税申告書の提出先は提出時の所在地で考え、地方税の法人税申告書の提出先は、必ずしも提出時の所在地とは限らないことになります。

つまり、この場合は国税の法人税申告書は川口税務署に提出しますが、地方税の法人税申告書は川口市役所への提出は不要となります。

まとめると、国税とは異なり、地方税は、申告書を提出する時点での本社(本店)の所在地ではなく、申告対象の事業年度内に本社(本店)所在地があった事実があれば、申告書を提出することになります。

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ひとこと

税理士としては、申告書の提出期限が迫っている時期に会社を移転されると困ります。
移転登記が完了していない状態で申告書を提出する事態になりかねません。
少なくとも申告書提出と同時に移転による異動届出書を提出して、税務署側が混乱しないように配慮したいところです。

出来る限り、決算日から2ヶ月間は、法人の本店を移転しないようお願い致します。