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先日ニュースで静岡県小山町の町長が総務省に2019年6月1日から始まる新ふるさと納税の指定先から外さないでくれ、と懇願したとありました。

現小山町長は2019年4月に初当選です。
総務省は、前小山町長が推進したふるさと納税の寄付金集めを問題視していました。
その結果、新町長は前町長の失政(?)を挽回すべく奔走しているわけです。

私は、これら一連のふるさと納税をめぐる狂騒について、感じていたことがありました。

なぜ、総務省に従わない地方自治体があるのか?

税理士は仕事柄、普段から税務処理を考えるにあたって通達というものを意識しています。
税理士にふだん馴染みのある通達とは、いわゆる法人税基本通達とか所得税基本通達などです。

一方で、税務職員は事務運営指針に拘束されて仕事に臨まれています。
事務運営指針もまた通達なのです。
通達とは、上位官庁が下級行政機関に対して、指揮監督権を発揮して文書により命令をだすものです。
つまり、通達は、上位官庁(国税庁)が下位官庁(国税局、税務署)に対して発する命令です。
税務職員は、上位官庁の命令はゼッタイになります。
なぜなら、上位官庁の命令に背くことは、国家公務員法第98条に違反になります。

ですから、これまで私は、総務省と地方自治体の関係性を国税庁と税務署と同じ関係性だと思い込んでいたため、今回一連の総務省に反発する地方自治体の存在が不思議に思えたのです。

理由を調べていくうちに、これまでは反発する地方自治体を冷ややかな目でみていたのですが、今は180度かわって、反発する地方自治体を擁護したくなりました。

国と地方自治体の関係性

現在総務省には、地方自治体に対する指揮監督権がない。
これは、通称「地方分権一括法」(正式には「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」)が2000年(平成12年)に施行されたことによる。
これを機に国と地方自治体との関係は、「上下主従」の関係から「対等平等」の関係になったはずである。
「対等平等」であるから、総務省は地方自治体に対して指揮監督権がない。

ところが、今回のふるさと納税をめぐる騒動では、総務省は地方自治体に宛てた文書に上から目線で「〇○すること」と連ねている。
どうやら、「上位」の立場にあった者には、長年醸成された上下主従の関係が染み込んでおり、相変わらず上意下達がまかり通るものと勘違いしているようだ。
したがって、総務省のふるさと納税に関する横ヤリに反発する「意識高い系」地方自治体があってもおかしくない。

地方自治法上の根拠

総務省も指揮監督権がないことの認識として、地方公共団体に対する「ふるさと納税」をとりまく通知書にはこうある。
地方自治法第245条の4の「技術的助言」に基づくもの、と。
これは通達(命令)ではなく、あくまで助言だと。

総務省は通知書に地方自治法を持ち出しているが、同じ法律のうちには以下のような文言もある。
私は、これを知って総務省に反発する地方自治体を擁護する気になったのである。

国は
普通地方公共団体が国の行政機関が行った助言等に従わなかったことを理由として
不利益な取扱いをしてはならない
(地方自治法第247条第3項)

まとめ 地方自治体の主体性は保護されるべき

文言中の「助言等」には、地方自治法上の「技術的助言」も含むと解すのが自然だ。

それゆえに、地方自治法に不利益処分の禁止がある以上は、2019年6月から始まる新ふるさと納税制度から特定の地方公共団体を対象から外すのはあってはならないことだと思うのだが、どうだろうか?