「予定納税額の減額承認申請」は実務上では重要とされます。
私が修行した過去の勤務先の事務所でも、口を酸っぱくして「もし、クライアントから希望があれば、忘れないように」と注意を促されたものでした。
でも、実際には滅多になくて、レアキャラ的な位置づけになります。
ですから、初めて申請をしたときは、ちょっと嬉しかったです。
そんなわけで、この時期旬な手続「予定納税額の減額承認申請」を説明します。
♦目次♦
予定納税とは?
予定納税とは、税を前払いで、ある程度支払うことです。
税務署は、個人事業者に対して、毎年6月15日までに予定納税額の通知書を発送します。
個人の予定納税は、7月(第1期)と11月(第2期)の2回に分けて支払います。
確定申告で確定した最終税額から1期・2期分を差し引き、過不足分を第3期に精算します。
予定納税制度がないと、納税者は、一時に多額の納税資金を用意する必要があったり、納税が困難になる恐れがあります。
一方で、国側としても予定納税制度があることで、税の徴収を未然に防ぎ、歳入を平準化が図ることができるので、都合がよいのです。
「予定納税額の減額承認申請」とは?
ただし、予定納税を納めることが厳しい場合も当然考えられます。
その場合は、予定納税すべき額の減額を認めてもらえることがあります。
その手続名を「予定納税額の減額承認申請」といいます。
第1期分から予定納税額の減少を求める場合には、申請期限が7月15日までになっています。
第2期分から予定納税額の減少を求める場合には、申請期限が11月15日までになっています。
「予定納税額の減額承認申請」をするための要件
予定納税額の減額承認申請が認められるためには、当然条件があります。
以下の基準に掲げる理由により所得が減少するような理由があって、その結果、予定納税基準額※1または申告納税見積額※2に満たなくなると認められる場合です。
【絶体的基準】(所得税法113条第2項)
・事業の全部・一部の廃止・休止・転換
・失業
・災害
・盗難・横領による損害を受けた場合
・医療費の支払い
そのほか申告納税見積額の計算の基準日におけるその見積額が、その申請の基礎となった予定納税基準額の70%相当額以下と認められる場合
特に個人事業者から法人成りをした場合を含みます。
【任意的基準】(所得税法基本通達113-1)
・婚姻
・出生
・生命保険の加入
・特定寄附金の支出
絶体的基準にかかげる70%以下にならない場合でも、任意的基準により承認される場合がある。
※1 予定納税基準額とは、前年分の経常的な所得に係る所得税の額から、その経常的な所得について源泉徴収された所得税の額を控除した金額。
※2 申告納税見積額とは、その年分の課税退職所得金額以外の課税所得金額の見積額につき計算した所得税の額から、その課税所得金額の見積額の計算の基礎となった各種所得につき源泉徴収される所得税の額の見積額を控除した金額。
融資を受けるために「予定納税額の減額承認申請」を活用する
個人事業者が金融機関から融資を受けることを検討している場合、予定納税額の減額承認申請を積極的に検討してみたいところです。
なぜならば、金融機関は、お金のあるところに融資をしたがるという大変保守的な性質を持っています。
その反面、金融機関は、お金の無いところには融資を渋ります。
だからこそ、最終的に税金の有利不利はないとはいえ、予定納税をすることにより一時的に資金が減少することは避けたいところです。
特に7月の予定納税は、7月の試算表に影響を及ぼすことになります。
金融機関は自社の中間決算である9月までによい恰好をしたいため、9月に向けて融資が積極的になる傾向があります。
したがって、融資を受けやすいこの時期を狙って金融機関に試算表を提出するのであれば、直近の7月の試算表が融資の審査に影響を与えるということになります。
「予定納税額の減額承認申請」をするなら
6月に予定納税額の通知書が届いてから、予定納税額の減額承認申請の提出期限まで1ヵ月をきっています。
減額承認申請を受けるためには、それ相応の理由が必要になります。
申請には、添付書類が必要になります。
とくに業績不振を理由にする場合は、6月までの試算表を添付書類として用意することになりますので、悠長に構えていられません。
すみやかに提出できるように、はやめのご相談をお願いいたします。