初めて平均課税の適用がある確定申告書の作成に関わったときは、嬉しかったです。
平均課税の適用が考えられるクライアント、いわゆる原稿料、印税を主な収入源とする作家、漫画家の皆様とは縁がないと出会う機会がないですから。
くわえて、平均課税は特殊な計算が気をそそることもあって、税理士にとって憧れ(?)の仕事なのです。
ありがたいことに本年も平均課税の仕事に数件携わることができました。
そんな平均課税ですが、申告にあたっては気を使う箇所、青色申告特別控除額の計算があります。
そこで、確定申告を振り返ってシリーズ第3回として今回は、平均課税の計算中にある青色申告特別控除について解説します。
♦目次♦
変動所得、臨時所得を計算するときは、・・・
変動所得、臨時所得に係る必要経費を区分する
例えば、事業所得の金額のうちに変動所得がある場合には、変動所得の収入金額、変動所得の収入金額に対応する必要経費をぬきだして、変動所得の金額を計算します。
青色申告特別控除額を計算する
事業所得の金額の計算上控除すべき青色申告特別控除額がありますが、そのうちどれくらいの金額を変動所得の金額に使用すべきか、という問題が生じます。
これは比率、割合の考え方を用いれば、合理的に求めることができます。
条文には、以下のように計算方法が定められています。
税特別措置法通達25の2-2(変動所得の金額又は臨時所得の金額の計算上控除すべき青色申告特別控除額)
青色申告特別控除額の規定の適用を受ける年分の不動産所得又は臨時所得の金額のうちに
変動所得又は臨時所得がある場合には、
①不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上控除される青色申告特別控除額に、
②青色申告特別控除前の不動産所得の金額又は事業所得の金額(・・・省略・・・)のうちに占める
③変動所得の金額又は臨時所得の金額の割合を乗じて計算した金額を、
変動所得又は臨時所得の金額の計算上、
青色申告特別控除額として控除する。
数字をあてはめて計算した方が分かりやすいです。
【具体例】
①の青色申告特別控除額を65万円
②の青色申告特別控除前の事業所得の金額100万円
③の変動所得の金額80万円(変動所得の金額の計算:収入金額110万円、必要経費30万円 )
として計算します。
【変動所得の金額の計算上控除される青色申告特別控除額の計算】
・65万円×80万/100万円(割合0.8)=52万円
「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」の書き方
「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」は、平均課税を適用して申告する場合には、必要な添付書類です。
単純に書面どおり数値を転記してしまうと、小さなカッコ書きの「青色申告者は青色申告特別控除後の金額」を考慮していない数値を記載してしまい、間違えてしまいます。
なぜ、国税庁はこんなミスを誘うような書面構成を長いこと放置しているのか、ホント理解に苦しみます。
【最終的な変動所得の金額の計算】
・110万円(変動所得の収入金額) - 30万円(変動所得の収入金額に対応する必要経費) - 52万円(変動所得の金額の計算上控除すべき青色申告特別控除額) = 28万円(青色申告特別控除後の金額)
したがって、確定申告書に添付する「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」前段には、Ⓐ収入金額の欄に110万円、Ⓑ必要経費の欄に30万円、所得金額の欄に28万円を転記することになります。
52万円を記入する欄はありません。
多くの方がいきなり28万円を記入することに面食らうのではないでしょうか?
おわりに
上の計算例は、簡単な数字を用いていますが、実際の計算は数字が細かくて複雑です。
幸いなことに、筆者の事務所が採用している税務ソフトウェアは、「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」に数字を入力を順次進めていくと自動的に青色申告特別控除後の所得金額が計算されてしまうので安心です。
(少し前まで自動計算されず手入力だったのですが)
おそらく、締め切りに追われる作家さん、漫画家さんの皆様をはじめ、一般の納税者にとって、平均課税を適用する確定申告書作成はハードルが高いと思われます。
仮に過去の年度において、平均課税の適用を失念していても、「更正の請求」をすれば、納めすぎの税金を還付してもらうことが可能です。
税金の還付を求めるにも時効がありますので、できる限り速やかな対応、税理士への依頼が望ましいです。