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新型コロナウイルスの影響で令和1年度の確定申告期限が4月16日まで延長された今日このごろです。
依頼された確定申告も大方が片づき、一段落。

そこで、確定申告を振り返ってネタを提供しようと思います。

まずは、税理士変更で小生に仕事が回ってきたのですが、前の税理士が間違えていた処理を解説します。

税理士に支払う確定申告報酬は未払計上できるのか?

前の税理士が作成した総勘定元帳を入手したところ、未払金勘定に税理士の確定申告料が12月31日付で計上されていました。

残念ながら「未払計上はできない」のです。
実は、経理中級者が「計上できる」と考えてしまう傾向にあるようです。

前の税理士が間違えていたと言うよりは、おそらく、スタッフが間違えていたのでしょう。
そう信じたい・・・。
そのぐらいプロとしてはあり得ないことなのです。

なぜ経理中級者ほど間違えてしまうのか、以下解説します。

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【会計】費用収益対応の原則

企業会計原則に費用収益対応の原則というものがあります。

費用収益対応の原則とは、損益計算書の作成にあたっては、収益と費用をできる限り経済的因果関係に即して、同一の会計期間に反映させるべき、という会計の基本的な考え方です。

たしかに、因果関係という点では、その年度の確定申告について支払う料金は、その年度の売上と対応する間接的費用に違いありません。

この費用収益対応の原則は、日商簿記検定で言うと1級で学習する内容になります。

税理士事務所のスタッフのほとんどが日商簿記2~3級を取得しています。
このくらいのレベルのスタッフですと、前例(過年度)の処理をそのまま迷うことなくマネします。
だから、こういう掲題のミスはしないのです。

ところが、1級レベルのスタッフは、前例が間違えていると判断してしまったり、前例がなければ、自己判断に自信があるため間違えた処理をしてしまうようです。
ですから、経理中級者の下(中の下)くらいの方が間違えやすいのではないかと思います。

このレベルのスタッフには、次の知識が欠落しているため間違えるのです。

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【税務】債務確定基準

個人の確定申告を題材にしていますので、所得税の通達で説明します。
法人税の通達も内容は同じです。

所得税基本通達37-2(必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定)

法37条の規定により
その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上
必要経費に算入すべき償却費以外の費用で、
その年において債務が確定しているものとは、
別段の定めがあるものを除き、
次に掲げる要件のすべてに該当するものとする。
(1)その年12月31日(・・・省略・・・)までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2)その年12月31日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3)その年12月31日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

(3)は過去の実績、締結された契約書があれば合理的な算定ができるからOKです。
ただし、(2)は事情が違います。

原因となる事実が発生していません。
なぜなら、税理士が行う確定申告書の作成は、少なくとも12月31日を過ぎないと本格的に取り組むことができないからです。
したがって、(2)の要件を満たさないため、税理士に支払う確定申告報酬は、12月末時点では未払計上できないのです。

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ここまで知っておく

確定申告報酬の取扱い

個人の会計では、所得税の方から制約があって未払計上できない。
法人の会計では、未払計上できるけど、法人税の方から制約があってその金額は別表加算される。

つまり、法人の会計では、費用が多くなって利益が少なくなっても、税金まで少なくなるわけではない。
さらに消費税の処理も含めると、ますます煩雑になるだけなので、何もいいことはないから未払計上はしない。※あくまで私の事務所のスタンスです。

所得税では、法人税と違って別表加算という調整ができないから、ゼッタイ未払計上してはいけないことを覚えておいてほしいです。

顧問料の取扱い

契約上定期的に支払う顧問料等は、個人・法人を問わず、未払計上できる。