広告

税理士になってから知ったことのひとつに「関与先名簿」の提出がある。

独立する前の事務所では、「関与先名簿」を作らされたことがなかった。
前の事務所は、雑用はすべて立場上自分より下位の者に押し付ける風土だった。
だから、これまで「関与先名簿」を一度も作らされたことがなかったことが、とても意外だった。

いざ、「関与先名簿」の作成にとりかかると、かなり面倒くさいものなのである。
なにしろ、事務所の関与先の個人・法人の名称および住所を所轄税務署ごとに作成するのである。

大型の事務所となると、1,000件超の関与先があるし、それを全国各地の所轄税務署ごとに1枚1枚を作成していく必要がある。
しかも、記載する順番は、法人の次は個人と指定されていて、個人を記載途中に1つでも法人の記載漏れがあるようなら、作成をやり直さなければならない。

だから、手書きで作成するとなると毎年大変な作業になるのである。

幸い、私は数年前からエクセルで作成し、前年分のエクセルファイルをコピーしてから目的の年分を作成しているので、ずいぶん作成が楽になった。

ところで、これまでは何の疑問も持たずに関与先名簿を提出していました。
でも「関与先名簿」を提出していない税理士もけっこういるようで。

資産税の分野では知らない税理士はいないであろう著名なI先生も、研修の講師を務められているなか「関与先名簿」に言及し、提出していないと語られていた。

税務署との合同例会(簡単にいうと月に1回、税務署の幹部とその税務署管内の税理士が集まる場のこと)では、関与先名簿の提出の締切があって、提出を催促してくる。

「関与先名簿」を提出しない税理士の言い分は、「提出義務は無いから」ということなので、その根拠を今回は調べてみました。

「関与先名簿」の法的拠りどころは、財務省設置法にあります。

財務省設置法第19条(任務)

国税庁は、
内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達及び税理士業務の適正な運営の確保
図ることを任務とする。

なるほど、所轄税務署から届いた提出依頼の文書中に「税理士業務の適正な運営を確保するため」とあります。

 

 

 

 

 

国税局の命を受けて、その下部行政組織である税務署の長の名で通知しています。
税務署長は、任務を果たすために「関与先名簿」の提出を求めています。

財務省設置法第20条(所掌事務)

国税庁は、
前条の任務を達成するため、
(・・・省略・・・)
次に掲げる事務をつかさどる。
 一 税理士制度の運営に関すること
 二 (省略)
 三 (省略)

税務署長の名のもとの提出依頼の文書中には、ご丁寧に「行政指導」とあります。
あくまで指導の一環ですから、税理士は必ずしも提出する必要は無いことになります。

提出しなかったことによる不利益もないことが、行政手続法の一文から分かりました。

行政指導に携わる者は、
その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、
不利益な取扱いをしてはならない。
(行政手続法第32条第2項)

個人的には、これまでずっと「関与先名簿」の提出はしてきたので、これからも提出していくつもりです。

ただ、頑として提出しない税理士も相当数いるようなので、今となってはそのような方に気骨を感じます。

根拠も知らずに素直に「関与先名簿」を提出していた過去の自分を恥じる。
そんな反省を忘れないようにしたいものです。