税務署が税理士にお願いする「関与先名簿」の提出は、どうやら地域によって異なるようである。
私が所属する地域では、5月に税務署から「関与先名簿」の提出のお願いが管轄内の税理士に通知される。
私が所属するU支部では「関与先名簿」に記載するのは、その年4月1日現在における関与先である。
あくまで任意であるから、一応の提出期限は本年は6月21日までとされている。
とはいえ、例会(U支部では原則として月に一度、税務署の幹部とその税務署管内の税理士会員が業務連絡、意見交換を行う公の場)では、「関与先名簿」を提出していない会員は提出を催促される。
例会に出席する税理士会員は全体の50%に満たない。
それゆえ、例会に出席する税理士会員は、律儀、素直な性格をあわせもっているせいか、「関与先名簿」の提出は義務のように感じてしまうだろう。
話を戻すと、他の地域では、「関与先名簿」に記載するのは12月末時点の関与先だったり、提出時期も違うようである。
あくまで行政指導の一環なので、全国均一的に実施されているわけではなさそうだ。
私が過去に勤務した事務所は、雑用は部下・後輩に押し付ける企業風土であった。
そんな事務所が、なぜ私に「関与先名簿」の作成をさせなかったのか?
そこで、理由を推察してみた。
一番に考えられる理由は、単純に過去の勤務先の事務所が提出していなかったことである。
そもそも「関与先名簿」は提出義務がないのだから、過去の勤務先の事務所が提出するつもりがなければ、私に「関与先名簿」を作らせることもないということ。
一方で、律儀に「関与先名簿」を提出していた場合に、考えられる理由としては、情報漏洩を恐れたことである。
なぜならば「関与先名簿」イコール「顧客名簿」なのだから。
「関与先名簿」には、クライアントの名称、住所、開始関与年を記載するだけなのだが、「顧客名簿」としては十分である。
悪意ある職員がいないとも限らない。
悪意ある職員がライバル事務所に「関与先名簿」を横流しする可能性は、決してゼロではない。
実際私の知人が働いていた某中堅事務所は、成長著しい新興事務所にスパイを送り込んだと聞いた。
知人の話は伝聞にすぎないが、産業スパイ、国家スパイがいるのだから、税理士事務所にスパイがいたっておかしいことではない。
(ずいぶんスケールが小さくて笑ってしまう)
また、職員の立場としては、自分以外の同僚が担当しているクライアントの詳細は知らないことがほとんどである。
したがって、単なる事務所の一職員が所属する事務所のすべての関与先を「関与先名簿」に記載しようにも無理がある。
仮に記載漏れがあると、税務署内で税務申告書と突合された場合に、「関与先名簿」に記載が有る無しという点であらぬ誤解を招く恐れがある。
だから、「関与先名簿」については、職員に手をつけさせず、税理士本人が直接作成した方がよいといえる。
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