おそらく一般の方で「皇室経済法」という法律の名称を聞いたことがある方は少ないかと思います。
自慢ではありませんが、税理士の多くは「皇室経済法」の存在を知っています。
勝手な憶測ですが、約30%の税理士は知っているのではないでしょうか。
もし、あなたの顧問の税理士が「皇室経済法」の存在を知らなかったら、残念ながら相続税法の基礎をおろそかにしている可能性が高いですので、近いうちに顧問を変更することをお勧めします。
税法の法律のうちに「皇室経済法」の文言が含まれるのは、たった2つ、相続税法と所得税法にあります。
そのうちの1つ、相続税法の条文がこの度の改元にとても関係があります。
(相続税の課税価格に算入しないもの)
皇室経済法の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
(相続税法第12条第1項第一号)
令和元年5月1日「剣璽継承の儀」にて「皇嗣が受けた物」、すなわち「三種の神器」の承継が行われました。
誰も見ることを許されないという三種の神器は、テレビでもイメージ図をとりあげていましたので、こういうものかと想像をふくらませることができました。
なお、三種の神器について相続税を課さない理由として次のような解説がされています。
(理由)憲法上の特殊な地位に随伴するもので、私的なものと異なり自由に処分することができない性質のものであることを考慮し、かつ国民的見地から非課税としている。
ところで、相続税法第12条は相続税の非課税財産を規定するもので、今回の皇位継承にともなう三種の神器の移転は、天皇陛下の崩御(相続)が起因ではない財産の移転であるため相続ではなく贈与を起因とします。
しかしながら、贈与税の非課税財産の規定には、皇嗣が受けた物(三種の神器)は列挙されていません。
その理由として、相続税法を施行する前に生前退位を想定していなかったからです。
相続税法は約80年前に施行された法律ですし、生前退位も約200年ぶりですので、相続税法が施行される当時は生前退位を想定していなかったのも無理のないことだと思います。
したがって、「皇嗣が受けた物(三種の神器)について 贈与税を非課税にするには、どうするのかな?」と個人的に興味があったところでした。
もちろん、小生の杞憂です。
しっかり、官僚の方々は法律を整えているものですね。
平成29年12月に法律ができていました。
天皇の退位及び皇嗣の即位により
皇位の承継があった場合において
皇室経済法第7条の規定により
皇位とともに皇嗣が受けた物には贈与税を課さない。
(天皇の退位等に関する皇室典範特例法附則第7条)
相続税でも贈与税でも、三種の神器は非課税になりるのですが、皇族であっても相続税、贈与税が課税される現実があります。
これは、皇族が経済的に大きな力をふるえることがないようにするという事なのでしょう。
改めて、「我が国は民主主義を断固守る」という強いメッセージを感じました。
また、喪中のなかで行われるより今回のような生前退位の方がお祭りムードがあります。
今後は生前退位が本流となっていく気がします。