この時期の税理士事務所は、7月10日納期限の源泉所得税の納付に対して、クライアント個々の対応をする必要があり、とても忙しい。
さらに、事務所によっては、クライアントの「算定基礎届」の作成・提出も請け負う場合もある。
この「算定基礎届」も提出期限は7月10日である。
なんとかならないのであろうか?
私の事務所も、先日完了した源泉所得税への対応に続き、「算定基礎届」の対応も完了したところである。
そんなわけで今回は「算定基礎届」に関連して、クライアントの社会保険料の削減の工夫を考えたい。
♦目次♦
社会保険料が決定されるアウトライン
社会保険に加入している事業主には、毎年1回、7月1日現在の被保険者の標準報酬月額を決定するために「算定基礎届」が送られてくる。
この「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則として1年間(9月から翌年8月まで)固定され、それに基づき社会保険料が決定される。
社会保険料の算定の基礎である「標準報酬月額」は、4月から6月の支給された給与の平均値で決定される。
その給与には、残業代、通勤手当が含まれる。
従業員側の視点にたつと、仮に給与が同じ額面であっても、個々の通勤手当の金額が違えば、社会保険料の標準報酬月額が異なることは、よくあり得ることである。
これは従業員の立場にたてば、けっこう腹立たしい。(筆者の過去の経験から)
定期昇給の時期を7月以降にする
定期昇給を7月以降に行えば、定期昇給前の給与で社会保険料の標準報酬月額が算定される。
つまり、定期昇給分が4~6月の給与に反映されないようにするのである。
現行の制度・慣例として定期昇給を4月としている会社が昇給の時期を先送りにするためには、従業員に理解してもらう必要があるかもしれない。
4~6月の残業代を抑える
算定基礎届に記載する4~6月分の給与には、残業代も含まれる。
つまり、4~6月に残業代の支給が多くなってしまうと、自ずと算定基礎届によって改訂される標準報酬月額が大きくなってしまう。
通勤手当の支給時期を工夫する
算定基礎届に記載する4~6月分の給与には、通勤手当も含まれる。
つまり、4~6月に通勤手当を支給すると、その分標準報酬月額が大きくなってしまう。
通勤手当は毎月支給するのが当たり前のように思われているが、そもそも通勤手当を支給するか、しないかは個々の会社の判断による。
だから、通勤手当の支給の時期も会社の判断で決定してよい。
具体例として、3月に6ヵ月定期券の代金を支給してもよいし、少し社会保険料削減の効果は劣るが、3月、5月、7月と奇数月に通勤手当を支給してもよい。
最後に
当たり前のように思える給与の支給の仕方でも、こうしなければならないという法的拘束はない。
社会保険料を削減しようにも、従来からある給与制度を変更することは、従業員の精神的な苦痛を伴うこともある。
したがって、事業主には、最初に従業員に給与の支給する前に給与制度の設計を専門家に相談することをお勧めしたい。