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以前見ず知らずの方から「源泉徴収票を発行して欲しい」という問い合わせがありました。

源泉徴収票は、本来給与を支払う事業主が発行するものです。
税理士事務所はクライアントから源泉徴収票の発行業務を請け負います。
少なくとも業務を請け負っているクライアントの従業員であれば、そのクライアントの承諾を得て、代わりに源泉徴収票を発行できます。

仮に、クライアントとは全く関係の無い見ず知らずの方に源泉徴収票を作成してあげたら、それは偽造になってしまいます。
(最近では、自身の住宅ローンのため偽造した税理士がいたり、某銀行が融資を受ける者の源泉徴収票を偽造して問題になりました。)

その見ず知らずの方には、申し訳ありませんが、その旨説明し、お引き取りお願いしました。

世の中には、源泉徴収票をもらえない方もいるんだな、と改めて感じました。

以前勤めていた会社が倒産等でなくなっていた場合を除き、事業主から源泉徴収票をもらえない場合の対処の仕方を説明します。

源泉徴収票が必要になるとき

  • 確定申告をするとき
  • 住宅ローンを組むとき
  • 賃貸契約をむすぶとき
  • 転職のとき
  • 行政の福祉を受けるとき

などなど、いろいろな場面で自己の収入を証明するために源泉徴収票が必要になります。

ですから、自分の勤めている会社、あるいは退職した会社から源泉徴収票をもらえないとなると大変困ってしまいます。

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法律的根拠の確認

なにはともあれ、源泉徴収票は事業主に請求するほかありません。
まずは理論武装しておきましょう。

事業主は、従業員に対して源泉徴収票を交付する法律的義務があります。

(源泉徴収票)
所得税法第226条第1項2項
居住者に対し国内において
給与等、退職手当等の支払をする者は、
その年において支払の確定した給与等、退職手当等について、
その給与等、退職手当等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票を作成し、
その年の翌年1月31日まで、年の中途において退職した場合は、退職の日以後1月以内
給与等、退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。

ちなみに、筆者が以前勤務していたある会計事務所は、退職後1月を過ぎても源泉徴収票を交付してくれませんでした。
(きちんとした会計事務所は、退職の日に最後の給与明細と源泉徴収票は交付されます。)

結局、その会計事務所は、筆者が源泉徴収票を請求するまで何の音沙汰もナシでした。

(源泉徴収票)所得税法第226条第4項ただし書き
給与等、退職手当等の支払をする者は、
給与等、退職手当等の支払を受ける者の請求があるときは
源泉徴収票を
給与等、退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない

いくら請求しても、源泉徴収票を交付しない事業主に対しては罰則が用意されています。

所得税法第242条
次の各号のいずれかに該当する者は、
1年以下の懲役又は50万円以内の罰金に処する。
一 ~ 七 (省略)
八 正当な理由がないのに所得税法第226条第4項ただし書きの規定による請求を拒む者

罰金を支払ったなんて聞いたことなく、形骸化している感があります。
しっかり税務署には対応してほしいものです。

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それでも発行してもらえないときは?

残念ながら、法律的義務があるにもかかわらず、源泉徴収票を交付してくれない事業者はけっこう存在します。

次の段階として、税務署に報告するという方法があります。
具体的には、「源泉徴収票不交付の届出書」を自分の納税地(ほとんどの人は住所地と考えてよい)の所轄税務署に提出します。
「源泉徴収票不交付の届出書」は国税庁ホームページからダウンロードできます。

「源泉徴収票不交付の届出書」により税務署から源泉徴収票を交付しない事業主に行政指導がはいることが期待されます。
行政指導を真摯に受け止める事業主であれば、源泉徴収票を交付してもらえるでしょう。

ここまでしてダメなら、お手上げです。
相手は罰金さえ恐れていないのですから。

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トラブル防止のために日頃から気をつけておくべきこと

給与明細、源泉徴収票は大切な書類です。

事業主から交付された給与明細、源泉徴収票は必ず保管しておくこと。
もし、源泉徴収票をどこかに提出しなければならない場合は、必ずコピーをとっておくこと。

とくに給与明細を発行しない事業主は、世の中に疎いか、無知か、法律遵守の精神が希薄ですので、働く側もいろいろな意味で気を付ける必要があります。

そんな事業主の下で働いていると、いつかトラブルに見舞われる可能性大です!