広告

プロローグ

筆者が代表取締役を務める法人の役員重任登記が遅れていることはわかっていたのですが、、、
半年遅れかと思っていたのですが、実際は1年半遅れという勘違いでした。

まあ、罰金は覚悟していたのですが、思っていたより高く30,000円でした。

法人の住所宛にではなく、個人の住所に地方裁判所の商事過料係から送られてきて、ビックリしますね。

会社法違反事件として、以下のような書面が届きます。

               主  文
上記の者を過料金30,000円に処する。
本件手続費用は、同人の負担とする。

               理  由
 上記の者は、上記会社の代表取締役に就任していたところ、令和〇年〇月〇日から2週間以内にすべき役員変更登記を令和〇年〇月〇日まで怠った。

個人宛にくるのですから「同人の負担」はごもっともなのですが、やはり知らないと驚くかと思います。

さておき、筆者は税理士なのですから、この過料について、このまま個人で支払うか、法人に負担させるべきか、あるいは・・・と検討するのがサガというものです。

広告

法人の役員に対する過料の取扱い

登記が遅れたことによる過料は、裁判所から法人代表取締役の自宅に送られてきます。
過料は、法人でなく個人宛にくるのです。
この過料を法人が代表取締役の代わりに負担した場合、税務上の取扱いはどのようになるのでしょうか?
代表者に対する給与とも考えられますが・・・。

仮に、給与となると定額同額給与に該当しないことから損金不算入、加えて源泉税の取扱いという問題も発生してしまいます。

通達の取扱い

法人の代表者は、法人のために行動し、その義務を果たす必要があります。
法人の行動や違反について背人を負うのは、法人を代表して行動をする個人です。

したがって、たとえ登記が遅れようが代表者が義務を果たす必要があるのですから、法人の業務に関連した行為と言えます。
以下法人税基本通達を確お認すると、下線のとおりとなります。

法人税法基本通達9-5-8(役員等に対する罰科金等)
法人がその役員又は使用人に対して課された罰金若しくは科料、過料又は交通反則金を負担した場合において、
その罰金等が法人の業務の遂行に関連してされた行為等に対して課されたものであるときは
法人の損金の額に算入しないものとし
その他のものであるときはその役員又は使用人に対する給与とする。

登記懈怠に伴い発生する過料を法人が負担した場合は、損金不算入の処理でよいと結論が導かれます。

通達の解説では

続いて通達の解説を確認してみました。

法人の業務の遂行に関連してされた役員等の行為につき課された罰金等を法人が負担するのは、
一般的には法人の使用者責任に基づくものであり、
経済的には法人の罰金等とも考えられる
ところから、
法人自体に課された罰金等と同様に取り扱うというものである。

                   法人税基本通達逐条解説(税務研究会出版局)

この説明にはちょっと違和感があり、説明不足かと思います。
なぜならば、「法人の使用者責任」とは、従業員に対して雇用責任を負っていることを言うのではないでしょうか?
役員は雇用契約に基づくものではありませんので、この説明では役員を対象とした行為をカバーしきれていません。

私的見解・結論

登記懈怠の過料は、代表者の責任原則に基づくものです。
上記通達の解説中「法人の使用者責任」を「代表者の責任原則」と読み替えれば、通達の考え方に沿って、代表取締役が負担すべき登記懈怠の過料を法人が負担した場合は、法人の損金不算入としてよいとなります。

広告

おわりに

正しい処理は、損金不算入ですが、間違った処理である給与と解説している税理士、司法書士のブログ等がかなり存在します。
司法書士による解説は、ほぼ全滅といった感じでした。
検索結果画面1ページ表示の税理士による解説でも、正:誤の割合が1:2といったところでした。