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税務の取扱いを調べるにあたって、フローチャートを頼りにすることが多いと思います。
フローチャートは分かり易いです。
良く出来ています。

税理士試験では、受験用テキストに掲載されているフローチャートを覚えて試験に臨まないと合格は覚束ないと思います。

そんな役に立つフローチャートですが、あくまで試験までの話です。
各種試験は、フローチャートの分岐をたどれば済むように問題が作成されているだけですから。
実際、税理士事務所がフローチャートだけで実務をしていたら、納税者に不利益を与えかねません。
このあたりは、勉強がかなり進んだ方が実務で陥りやすいところです。

実務にあたっては、フローチャートだけでなく根拠条文・通達をしっかり確認して欲しいと思います。

具体的には、フローチャートでは「〇〇円」「〇〇%」とでてくるけれど、実際は「おおむね〇〇円」「おおむね〇〇%」となっているものがあります。

「おおむね」の範囲をどう捉えるか?
修繕費と資本的支出の区分を例に、筆者なりに一定の結論を得ましたので参考にしていただければと思います。

修繕費判定の形式基準とは?

形式基準は、資本的支出か修繕費であるか分からないものについて、簡便的に税法上は修繕費として認めるものです。

形式基準による修繕費の判定の仕方は、法人税と所得税で違いはありません。
形式基準として以下のものがあります。

  • 20万円未満基準
  • 3年基準
  • 60万円未満基準
  • 10%基準

20万円基準と60万円基準は分かり易いです。
それぞれ通達で「20万円未満」、「60万円未満」と明確にしているのですから。

一方で、3年基準と10%基準は違います。
通達では「おおむね3年以内」、「おおむね10%」とあいまいな表現になっています。

「おおむね3年以内」という幅を残すことは理解できます。

業者に修理を頼んでも、業者の受注件数が多ければ工事が先送りになることは、よくあることです。
すると結果的に、ある年においては前回の工事から3年を超えてしまうことも起こります。

ゆえに、単に3年以内と明確にすることを避けるために「おおむね」としているのだ、と想像がつきます。

問題なのは、「おおむね10%」基準です。

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10%基準の通達

以下法人税基本通達から引用します。(所得税では基本通達37-13)

(形式基準による修繕費の判定)法人税法基本通達7-8-4
一の修理、改良等*のために要した費用の額のうちに
資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、
その金額が次のいずれかに該当するときは、
修繕費として損金経理をすることができるものとする。
(1)その金額が60万円に満たない場合
(2)その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

* 一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等をいう(法人税法基本通達7-8-3)。

問題なのは、取得価額のおおむね10%相当額と金額が大きくなればなるほど、修繕費と認められる金額の余地が大きくなります。
おおむねの範囲をどの程度まで捉えるべきか、疑問が残ります。

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おおむね10%の範囲は?

「おおむね」とあるけれど、どの程度まで認められるのか?
この疑問に応えてくれる専門書籍がやっと見つかりました。

この書籍は、初版において日本税理士連合会の「日税研究奨励賞」を受賞しています。
初版から30年、版を重ねる業界のベストセラー的な専門書です。
その著者の見解ですので有用性は高いと思います。

その著者の見解によれば、おおむね10%の程度は、10%台と記されていました。
言い換えると、11%未満であれば、10%基準が適用されると捉えることができます。

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結論

なぜ、おおむね10%とされているのか?個人的な憶測を述べます。

一の計画においても・・・
・工事の途中で追加の処置が発生する場合があること
・資材等の急激な高騰がありえること
・想定より工事期間が長引くことで業者から追加負担を求められるケースがあること


そのような事態を想定して、「おおむね」と基準に冗長性をもたせているのだと思います。

個人的な結論として、おおむね10%の程度は、11%未満としたいです。

免責事項

なお、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。
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参考文献

* 成松洋一、河手博「改訂第八版減価償却資産の取得費・修繕費」663頁(税務研究会出版局2020年)