令和3年度4月1日に入って、個人的に衝撃的なニュースが立て続けに入ってきました。
筆者は将棋をたしなみ、プロの将棋棋士、将棋界のニュースを日頃からウオッチしています。
4月1日:史上初の女性のプロ将棋棋士を目指していた西山朋佳さんがプロ棋士養成機関である奨励会を退会されました。
実力はあったし、あと一歩と迫っていたところでした。
奨励会の結果、成績は、随時日本将棋連盟のHPにアップされるのですが、ずっと追ってきただけに残念です。
4月2日:橋本崇載八段が衝撃的な事情で引退を日本将棋連盟に申し入れ、受理されました。
30代後半での早すぎる引退です。
興味のある方は、YouTubeで橋本さん本人がチャンネルを開設していますので、そちらをご覧いただければ、と思います。
さて、申告期限が延長された令和2年分の確定申告の仕事もほぼ終了といったところです。
今回は、事業所得を有する個人事業者が、遠出した際に、自身に日当を経費として支払っている事例です。
この日当は、事業所得の必要経費として認められるのでしょうか?
答えは、この日当は必要経費にならないのですが、誤解している方が多いようなので解説します。
♦目次♦
日当の性質
日当は、サラリーマンが勤務する場所を離れてその職務を遂行するために、通常必要と想定される生活費の実費弁償のために支払われるものです。
使用者(法人や個人事業者)は、業務上必要であるから、職務を遂行するその雇用人が本来の生活とできるだけ変わらず過ごせるように生活費を弁償してあげたいと考えるから日当を支払うのです。
仮に、出張に行って勤務先から交通費と宿泊費だけしか実費精算されなかったら、どういう気持ちになりますか?
自宅以外で宿泊するとなると、なんだかんだで余計な出費がありますよね。
マイナスの感情の積み重ねは、従業員の職場定着にマイナスの影響を与えます。
長期的視野にたてば、業績悪化につながりかねません。
使用者(法人や個人事業者)にとって日当の支給は、雇用者に気持ちよく職務を遂行してもらうために業務上必要であるから必要経費です。
日当が非課税になる法的根拠
日当は、受け取る側のサラリーマンにとっては非課税です。
所得税はかかりません。
所得税法のうちに非課税になるものとして、いわゆる「日当」が該当することが以下の下線部分から読みとることができます。
(非課税所得)所得税法第9条第1項第四号
給与所得を有する者が
勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、
若しくは
転任に伴う転居のための旅行をした場合
又は
就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族が
これらに伴う転居のための旅行をした場合に、
その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、
その旅行について通常必要であると認められるもの
文言の主語が「給与所得を有する者」ですので、法人の役員を含め、サラリーマンに対して支給される日当が非課税になるのです。
感のいい方は気づいたと思いますが、ここで、もう個人事業者は除外されています。
立場の違いによる取扱いの違い
個人事業者は、自分に対して給与を支払うことができません。
仮に、支払う形式をとっても所得税の計算では必要経費になりません。
同様に、日当を自分に支払う形式をとっても所得税の計算では必要経費にならないのです。
受取側の所得税が非課税かつ支払側の必要経費:〇 それ以外:× |
日当を支払う側 | ||
法人 | 個人事業者 | ||
日当を受け取る側 | 雇用者として | 〇 | 〇 |
法人の役員として | 〇 | 問題の所在なし | |
個人事業の主宰者として | 問題の所在なし |
× |
どうあがいても、個人事業者がその個人事業の主宰者である自身に払う「日当」は必要経費にならないのです。
例え、旅費規程を整備していたとしてもです。
考えてみれば、自分に日当を払っても、その時点では自分の財産に増減は生じていませんし、誰かに財産の移転も生じていません。
誰にも所得の増減はありませんので、所得税の計算では個人事業者が自身に払う日当はノーカウントになります。