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2020年に続き、2021年も確定申告の期限が1ヵ月延長になりました。
早い時期に1ヵ月の延長が発表されましたので、昨年と比べてクライアントの確定申告の準備の動きが鈍かったです。

さて、クライアントの確定申告のなかで気になるものがありました。

クライアントが所有する土地がある。
その土地の近くでクライアントとは無関係の工事の予定があった。
その土地の使用、具体的には工事用車両の通行、留め置きを許すものとして、工事の業者から対価(いわゆる通行料・謝礼)を受け取った。

一見、自己の事業とは無関係で偶発的な収入だから、性格的には一時所得のように思えます。
それとも雑所得?不動産所得?

今回は、所有する土地の使用、通行を許可した場合に受け取った「通行料」の税務上の取り扱いを説明します。

通行料の性質

土地の所有者は、自由にその土地の使用、収益、処分をする権利を有しています。
土地の所有者ではない者が、その土地を使用する場合には、何らかの使用権限を取得する必要があります。
使用権限を得るために、契約書なりで認めてもらう必要があります。

仮に、否応なしに通行料を受け取ったのだとしても、自己の土地を使用させる権限の見返りに対価を受け取ったものと解釈するのが自然でしょう。

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所得分類の検討

所得税法第34条(一時所得)
一時所得とは、
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち
営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得
労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

所得税では、すべての所得は10種類に区分されます。

下線「以外の所得のうち」の前に、①利子、②配当、③不動産、④事業、⑤給与、⑥退職、⑦山林、⑧譲渡と8種類の所得が列挙されています。
下線「〇〇以外の所得のうち」とは、残りの所得である後の35条で定義している「雑所得」と本条で定義する「一時所得」しかありません。

降ってわいた通行料は、上記「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」であるように思えます。

まだ、一時所得と断定するのは早いです。

「通行料」が一時所得とは別の所得にあてはまる根拠があれば、「通行料」は一時所得ではないことになります。

そこで、不動産所の定義を確認してみましょう。

所得税法第26条(不動産所得)
不動産所得とは、
不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下「不動産等」という。)の
貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による
所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

通行料は、「他人に不動産等を使用させること」を認めたうえで、その見返りに受け取る収入です。

したがって、通行料の受け取ったことによる臨時収入は、一時所得に該当する余地はないことになく、不動産所得になります。

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3年以上の使用を許諾する通行料を受け取った場合の取扱い

土地を使用させる期間が3年以上である場合、所得税法上は不動産所得のうちの「臨時所得」として、所定の要件に該当すれば、平均課税の適用を受けられます。

所定の要件は、簡便に書くと以下のようになります。

  • 3年以上の期間、他人に不動産の上に存する権利を使用させること
  • 承諾料(≒通行料)が年額換算した場合の2倍以上であること
  • その年分の臨時所得の金額がその年分の総所得金額の20%以上であること

平均課税を適用する場合は、確定申告書の記載方法に注意すべきことがありますので、こちらの記事もご参考に。