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ある納税者の確定申告書を拝見していて、雑所得の欄に●百万円とありました。
それは、貸株料とのことでした。

(とんでもない資産家キタ━(゚∀゚)━‼‼)
対面中は冷静を装いながらも、その金額の大きさに驚きでいっぱいでした。

貸株の存在は知っていました。

金利が安いという先入観。
確定申告するには面倒。

という理由で、イマイチ貸株を実行する気にはなれないでいました。

これも勉強だと思って、自分でも貸株をし、貸株料の確定申告をしてみました。

貸株とは?

貸株とは、簡単に言うと、自分の持っている株式を証券会社に貸すことです。
そして、その見返りに利息(以下「貸株料」という)をもらいます。
なお、配当基準日に貸株状態になっていた場合は、配当金の代わりに配当金相当額(以下「貸株配当金」という)をもらいます。

株券貸借取引とは?

貸株取引を法律的にとらえると「株券(等)貸借取引」であり、民法587条の取引に該当します。

株券等貸借取引
貸出者(投資家)が借入者(金融商品取引業者)に株券等を貸し出し、
合意された期間を経た後、
借り受けた株券等を同種、同等、同量を返還することを約する消費貸借取引

税務では、法律的形式と経済的実態のどちらかに着目して課税関係が決まります。
貸株については、法律的形式が課税関係を決定します。

貸株料の税務上の取扱い

貸株料は、株券の貸借取引から生じる賃貸料です。
所得税法では、貸株料は雑所得に該当します。

貸株料の経済的な性質が利息と同一なのだから利子所得なのでは?
と考えてしまう方もいるかもしれません。

利子所得(所得税法23条)は、限定列挙です。
したがって、限定列挙に該当しない以上は、雑所得に分類されます。

貸株配当金の税務上の取扱い

貸株配当金は、貸株期間中は投資家は株主でなくなっており、証券会社が株主になっているため、証券会社から配当代わりに受け取る金銭です。
所得税法では、貸株配当金は雑所得に該当します。

貸株配当金の経済的な性質が配当金と同一なのだから配当所得なのでは?
と考えてしまう方もいるかもしれません。

貸株配当金は、株主たる地位に基づいて受ける配当金ではありません。
したがって、限定列挙である配当所得(所得税法24条)に該当しない以上は、雑所得に分類されます。

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貸株のメリット・デメリット

貸株のメリット

  • 株式を貸すことにより貸株金利が得られる
  • 訳あって売却できない株式を活用できる
  • 貸株期間中でも株式の売却は自由にできる

一番のメリットは貸株金利を得られることです。
なかには証券会社が10%の金利が設定している銘柄もあります。
そのような銘柄は倒産確率が高いと思われているので、倒産リスクに見合った金利が設定されています。

貸株にすることは、株価下落で塩漬け状態、持ち合い株などで売却できない、配当金を得られない株式であっても、売却収入、配当収入とは別に収入を得る手段になります。

貸株期間中であっても自由に株式の売却は可能であるため、何もしないよりはいいです。
下記のデメリットを押さえたうえで貸株をしてほしいと思います。

貸株のデメリット

  • 確定申告の手間がかかる
  • 貸株を預けている証券会社が倒産したら、その銘柄は保護されない
  • 株主優待は得られない(ただし、証券会社によって対策あり) ➡ 継続保有特典がある銘柄は注意!

貸株を行った場合の最大のデメリットは、確定申告の手間がかかることです。

まずは、自身が確定申告義務があるか否かを把握する必要があります。
確定申告義務があるか否かは、いわゆる20万円基準の他いろいろありますので、この記事では詳細は省きます。

株を貸している証券会社が倒産したら、その株式銘柄は戻ってきません。

貸株料も欲しいけど、配当金の権利確定、株主優待を取得したい場合は、証券会社が株主優待・配当金の権利確定日に自動的に貸株を解除するサービスを提供しています。
(証券会社によって提供しているサービスは違いますので、確認が必要です。
また、継続保有特典がある銘柄の全部を貸株にしてしまうと、継続が途切れてしまうため要注意です。)

その他

NISA口座にある株式銘柄は、貸株の対象にはなりません。

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貸株料・貸株配当金の確定申告のしかた

参考までに筆者が利用しているauカブコム証券の場合(2022年1月調べ)です。

特定口座年間取引報告書が役にたたない

特定口座年間取引報告書は、特定口座内の年間の 利子所得、配当所得、株式等譲渡所得について記載されています。
貸株料・貸株配当金は雑所得に該当するため、特定口座年間取引報告書からは一切その収入金額を確認することができません。

特定口座年間取引報告書は、日本のどこの証券会社でも同じ雛形ですので、auカブコム証券に限らず、すべての証券会社で役に立ちません。

いわゆる年間損益計算書を確認する

「●年 年間損益計算書」に「貸株配当金の年間支払計算書」が区分されており、貸株配当金の年間収入金額を確認できました。

ところが、貸株料は記載がありませんでした。

確定申告を税理士に依頼する場合は、貸株があることを伝える必要があります。
税理士は、特定口座年間取引報告書だけでは、全く貸株の存在に気がつきません。
貸株の取引経験がない税理士だと、なおさら気がつかないです。

取引データをダウンロードする

困りましたので、auカブコム証券の電話サポートを利用して聞きました。

「取引履歴」から「貸株/代用」、表示したい年分を選択すると、WEB画面上に年間履歴が表示されます。

紙出力が必要でしたら、CSVをダウンロードして印刷できます。

確定申告書に転記

【令和3年分の確定申告書】
貸株料・貸株配当金の収入金額は、確定申告書第一表の収入金額等の雑・その他に反映させます。

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雑感

個人的には、株主優待なしで無配状態の銘柄で売却益を狙う場合には、貸株にしています。
無配状態ですから財務状況は良好と言えないですが、その反面、高金利の貸株料を得られるのは嬉しいです。

貸株料の確定申告は、税理士の認識不足、証券会社の対応整備も遅れていることもあり、日本全国で積もり積もって相当な申告漏れがあるように思います。