本日11月29日、クライアントである仮想通貨を保有する法人の申告を済ませました。
実は、この法人の申告は冷や汗をかいた案件だったのです。
というのも、仮想通貨に関しては、平成31年4月に法人税の改正が入っておりまして、フォローしておいたつもりだったのですが、見落としていたことがあったのです。
それに気がついたのが、11月5日でした。
まあ、申告期限までには余裕がありましたので、涼しい顔でクライアントには決算説明することができました。
今回見落としていた点は、いろいろある改正情報を拾い読みしているだけでは気が付かないといいますか、その点に触れているものが見当たらないです。
もしかして?と思って、そのことについてピンポイントに検索をしなければ、正解に辿りつかなかったと思います。
それを注意喚起するのが今回の記事です。
♦目次♦
仮想通貨に関する平成31年法人税改正
法人における仮想通貨の税務上の取扱いが平成31年4月1日から施行されました。
今回は法人税の話です。
個人の所得税の話とは全く違いますので、読み進めるにあたってはご注意をお願いします。
法人における仮想通貨の評価方法
分かりやすさを重視して簡便に説明します。
今回の改正で法人が保有する仮想通貨の評価方法は、原則として移動平均法に決まりました。
例外として総平均法も認められることになりました。
また、メジャーな仮想通貨は、貸借対照表上は時価で計上することになりました。
時価で計上するため、損益計算書上は、評価益又は評価損を計上することになりました。
マイナーな仮想通貨は、貸借対照表上は原価で計上し、損益計算書上の処理は必要ありません。
平成31年4月1日前に仮想通貨を有していた場合
今回冷や汗をかいたのが、法人が平成31年4月1日前に仮想通貨を有していた場合の取扱いです。
以下の条文から届出書を提出する必要があることが読み取れます。
法人税法施行令附則(平成31年3月29日政令第96号)第7条
(短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続等に関する経過措置)
この政令の施行の際
現に改正法第2条の規定による改正後の法人税法第61条第1項に規定する仮想通貨(以下この条において「仮想通貨」という。)を有する法人については、
施行日にその仮想通貨を取得したものとみなして、
新令第118条の6第4項の規定を適用する。
このままだとサッパリ分かりませんね。
分かりやすく書くと以下のようになります。
法人税法施行令附則(平成31年3月29日政令第96号)第7条
(短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続等に関する経過措置)
平成31年4月1日において
仮想通貨を有する法人については、
平成31年4月1日にその仮想通貨を取得したものとみなして、
平成31年4月1日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに
仮想通貨ごとに評価方法を
「短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書」を納税地の所轄税務署長に届け出なければならない。
分かりやすく書いたら、原文をほとんど留めていませんね(苦笑)
問題は総平均法を採用している場合
これまで、平成31年改正前の法人税では、仮想通貨に関する定めがありませんでした。
もちろん、それ以前から仮想通貨は世の中に流通していたわけです。
ですから、法人税の実務に携わる者としては、法人税における仮想通貨の扱いに関しては手探りの状態が続いていたのです。
仮想通貨の評価方法は、会計理論上は最も合理的な処理である移動平均法に決まりました。
ただ、実際事務上の運用する(計算する)立場としては、移動平均法は面倒が多く、総平均法の方が簡便な処理のため、総平均法を採用していた法人(指導する税理士)も多いのではないかと推測します。
ここまで読んでいただければ、お察しのとおり、私のクライアントには総平均法を採用させていました。
経過措置では、総平均法を採用していた法人は、平成31年4月1日に取得したものとみなして、「短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書」を提出することを要請しているのです。
つまり、最初から原則的な方法である移動平均法を採用している法人は、上記の届出書を提出する必要がないのです。
仮に総平均法を採用していた法人が上記の届出書の提出を忘れてしまうと、税務調査の際に計算しなおすことになり、増差額(利益又は損失)が発生します。
まだ損失が発生ならよいのですが、利益が発生となりますと、想定外の追加課税が発生しないとも限りません。
したがって、抜け目なく上記の届出書を提出しておく必要があるのでした。
総平均法を採用してしまった以上、今後は仮想通貨の種類ごとに上記の届出書を提出する必要があり、思わずクライアントに「仮想通貨の種類を増やさないように」と釘をさしてしまったのでした(笑)