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小規模企業共済は、安全な節税商品であり、その年分の節税効果に期待して12月に駆け込み加入する者がとても多いです。
ですので、税理士事務所では、毎年11月になると小規模企業共済についてのご相談者が現れます。
また、年末調整の実務に携わっていますと、既存の共済加入者の「小規模企業共済掛金払込証明書」もチラホラとみる時期でもあります。

税理士事務所にとっては、馴染みの深い小規模企業共済ですが、「ギョッ!?」としたことがありました。
「前納減額金」です。
今まで不思議とお目にかかることがありませんでした。
今回は、「前納減額金」を記事にしたいと思います。

小規模企業共済とは?

小規模企業共済制度は、国が100%出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
契約者から預かった掛金を運用し、その運用による利益をすべて契約者に還元する仕組みになっています。
運営経費は国が負担していますので、利益をすべて還元可能にしています。

小規模企業共済は、小規模の法人、個人事業の経営者のための退職金積立制度です。
積立(掛金)は、全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります。

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前納減額金とは?

掛金を前納したことにより、運用の原資となる元本が増えた分、そこから生じる運用益が増えることになります。
その運用益分は割引しましょう、というのが「前納減額金」です。

取扱い

掛金を前納したことにより前納減額金の支払を受けているときは、支払った掛金の額からその前納減額金を差し引いた残額が控除の対象となります。
                  国税庁「年末調整のしかた」のパンフレットより

具体例:掛金月額70,000円、前納減額金8,700円

70,000×12-8,700=831,300円(小規模企業共済等掛金控除の対象)

書類への記入

年末調整で控除を受ける場合

「〇年分給与所得者の保険料控除申告書」の「小規模企業共済等掛金控除」の「独立行政法人中小企業基盤機構の共済契約の掛金」の欄に記載

確定申告で控除を受ける場合

「確定申告書第二表」の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記載、他の掛金の有無を確認し、合計額を第一表の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に転記

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注意しておきたいこと

ブログ等で掛金月額を最大8万円?としているものがある

8万円は間違いです。
正しくは7万円です。
かつては、「セーフティ共済」の掛金月額が最大8万円でした。
小規模企業共済とセーフティ共済を混同されているのだと思います。

毎年発生するようなものではないこと

現行制度においては、前納減額金は毎年発生するようなものではありません。
定められた計算式によって導かれた前納減額金が、5,000円以上となった場合に受け取りになります。
5,000円未満の場合は、翌年に持ち越されます。

払込証明書を確認すること

必ず中小企業基盤整備機構から送られてくる「小規模企業共済掛金払込証明書」を確認してください。
払込証明書には、掛金月額、前納減額金が記載されています。
前述のように前納減額金は、毎年発生するものではありませんし、発生する納税者の方が稀です。

特に税理士事務所で実務慣れしている方は、クライアントから受け取る書類に不備が多い(払込証明を提示・送付してこない等)こともあり、手間を省くため前年どおりの処理をする傾向があります。
そのため、見落としやすいように思います。