先日の記事で、地方法人税の還付に自動で対応する会計ソフトは少ないため、結果、地方法人税の還付を受けていない中小企業者等が相当数あるものと考えられる、とお話しました。
加えて、実は少し前まで筆者が使用している税理士専門の会計税務システムは、ソフトウェア上法人税申告書に自動で数字が転記されてこない仕組みだったことをお話しました。
そこで、今回は筆者が事を知った経緯、繰戻し還付をした体験から、専門ソフトを使用していても間違えてしまうことがある、というお話です。
♦目次♦
ソフトの不具合に気付いた経緯
筆者が使用している会計税務システムは、業界大手のベンダーではありません。
比較的歴史の浅い会社です。
地方法人税が創設されて、一番最初に繰戻し還付を行ったのは、平成30年8月の法人税申告でした。
繰戻し還付するには、法人税申告書の提出期限までに「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を税務署に提出しなければなりません。
システム上の流れにそって「欠損金の繰戻しによる還付請求書」をソフトウェア上で作成し、無事に法人税申告書別表一の27欄の外書に還付金額が転記されてきました。
恥ずかしながら、筆者はこの時まで地方法人税の繰戻し還付の存在に気づいておらず、これで法人税申告書の作成も終了だと思っていました。
筆者はクライアントに「納付税額一覧表」を渡しています。
その前に「納付税額一覧表」をみて、申告期限までに納めなければならない税金の額を納付書に転記していますので、必ず「納付税額一覧表」をソフトウェアから印刷をしているのです。
「納付税額一覧表」を見ると、「法人税」の上に「欠損金繰戻し」の文字があり、今回の申告で還付を受ける法人税額がわかるようになっています。
いつもなら、赤字の申告には地方法人税は発生しませんので、気に留めず地方税の均等割だけを確認して終了です。
ところが、なぜかその時気がついてしまったのです。
「地方法人税」の上に「欠損金繰戻し」の文字があることを。
「まさか!?」と思い、ググってみました。
税理士のブログで一人だけ地方法人税の繰戻し還付に触れている方がいました。
税務職員が講師を務めた税理士会の研修で知ったようです。
当人も半信半疑のせいか「自己責任でお願いします」と予防線を張っていました。
「「欠損金の繰戻しによる還付請求書」には、地方法人税の還付を記載する欄がないのに、なぜ還付できるのだ?」
「そんなこと聞いたことない」
「税制改正の解説でそんなこと言っていた記憶がない」
頭が混乱し、切羽詰まった不安のなか、8月の冷房が効く部屋の中で、ものすごい汗が流れたのを覚えています。
無料でもらった法人税申告書の記載方法を解説した書籍(ラッキー!)で確認したところ、地方法人税の繰戻し還付の金額は法人税申告書別表一の45欄に外書すると説明がありました。
「なんだよ!ソフトウェアは自動で計算してくれていないじゃん(怒)」
そんなわけで、ソフトを過信してはいけないのです。
自分で「地方法人税」の繰戻し還付額を計算して、ソフトウェア上で上書きしなければならないのでした。
地方法人税の繰戻し限度額
現在、筆者が使用しているソフトウェアは改善され、繰戻し還付法人税に地方法人税の税率を乗じた金額が地方法人税の還付として転記されるようになりました。
ただし、転記された金額が必ずしも正しい処理となるわけではありません。
地方法人税の繰戻し還付は、前事業年度の地方法人税の額を限度として還付されます。
ただ、ソフトウェアが自動計算しただけでは、前事業年度の地方法人税の額を超えた金額が転記されてしまいます。
なぜならば、前事業年度の地方法人税は、前事業年度の法人税額を課税標準としています。
その課税標準は千円未満切捨てだからです。
自動計算は、千円未満を切り捨てる前の金額(100円単位)に地方法人税の税率をかけているため、高い確率で前事業年度の地方法人税と比較して大きい金額が算出され、転記されてしまうからです。
前年度と比較しなければならない、この点までソフトウェアが改善されることは難しいのでしょうか?
ですから、これからも地方法人税に関する間違いに気づかず、そのまま法人税申告書を提出してしまう税理士は相当いると思います。
まとめ~クライアントに知っておいてもらいたい現実
- 専門家が使用するソフトウェアでも不具合がある
- なおさら、専門家以外をターゲットとしている市販のソフトウェアは信用できない
- ソフトウェア任せで自ら検算をしない税理士は多い
- 実務から離れている税理士は、ソフトウェアのミスを含めた職員のミスに気がつかない
- 結果、損はまわりまわってクライアントに